2019年6月3日、金融庁が「高齢社会における資産形成・管理」という報告書を公表しました。
「95歳まで生きるには夫婦で2,000万円の金融資産の取り崩しが必要」という試算が示されており、自助努力による資産形成を求める内容です。
関連ニュースを見て、「もう国民年金保険料を払うのはやめよう」と思いませんでしたか?
「年金だけで生活できないなら保険料を払う意味がない」と感じるかもしれませんが、それでも国民年金保険料を払い続けるべきだと私は考えます。
今回は、国民年金保険料を払い続けるべき3つの理由についてお伝えします。
国民年金保険料を払い続けるべき3つの理由
万が一のときには遺族年金が支給される
国民年金に加入している人が死亡すると、遺族の生活保障として遺族基礎年金が支給されます。
遺族基礎年金を受給できる遺族の範囲は以下の通りです。
死亡した人によって生計を維持されていた
- 子のある配偶者
- 子※
※子は18歳到達年度の3月31日を経過していない、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級
また、遺族年金の支給額は以下の算式で計算できます。
780,100円+子の加算額※
※子の加算額は第1子・第2子が各224,500円、第3子以降74,800円
たとえば、夫、妻、子の3人家族で夫が亡くなった場合、子が18歳になる年度の3月31日まで、遺族年金が年1,004,600円(780,100円+224,500円)支給されます。
死亡した人が厚生年金に加入していた場合は、さらに遺族厚生年金も支給されますよ。
子育てをしている人にとって、遺族年金はとても心強い制度ですよね。
しかし、加入期間の3分の2以上の保険料を納めていないと遺族年金は支給されません。
年金だけでは老後資金が不足するからといって年金を払うのをやめてしまうと、万が一のときに遺族が必要な保障を受けられなくなってしまいます。
子育て中の場合は、家族のために国民年金保険料を払いましょう。
参考:遺族年金|日本年金機構
病気やケガで所定の障害の状態になったら障害年金が支給される
病気やケガによって所定の障害状態になった場合、国民年金に加入していると障害基礎年金が支給されます。
支給される年金額は以下の通りです。
- 1級:780,180円×1.25+子の加算額※
- 2級:780,180円+子の加算額※
※子の加算額は第1子・第2子が各224,500円、第3子以降74,800円
※子は18歳到達年度の3月31日を経過していない、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級
会社員など厚生年金に加入している場合は、障害基礎年金に加えて障害厚生年金も支給されますよ。
障害年金対象の病気には、がんや糖尿病のような内部障害のほか、うつ病などの精神障害も含まれます。
生きているといつ病気になるかわかりませんから、障害年金の存在は大きいですよね。
しかし、遺族年金と同じく、加入期間の3分の2以上の保険料を納めていないと障害基礎年金は支給されません。
もしものときの自分の生活を守るためにも、必ず国民年金保険料を払いましょう。
参考:障害年金|日本年金機構
そもそも年金が支給されなくなるわけではない
公的年金制度が多くの人にとって老後の収入の柱であり続けることは間違いないが、少子高齢化により働く世代が中長期的に縮小していくことを踏まえて、年金制度の持続可能性を担保するためにマクロ経済スライドによる給付水準の調整が進められることとなっている。
引用:高齢社会における資産形成・管理(P24:金融庁)
金融庁の報告書に関するニュースでは、老後資金が2,000万円不足することが協調されていますが、(現時点で)年金が支給されなくなるわけではありません。
報告書には「公的年金制度が多くの人にとって老後の収入の柱であり続けることは間違いない」と書かれています。
夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯で、不足額の総額が1,300万円~2,000万円なると試算していますが、実際の不足額はライフスタイルなどによって異なるはずです。
働く期間を長くしたり、家計を見直したり、資産運用に取り組んだりすることで、不足額を解消できる可能性は十分にあります。
国民年金保険料を支払わず、老後資金をすべて自分で用意するのは、普通の人にとっては現実的ではありません。
関連ニュースを見て感情的になるのではなく、まずは金融庁の報告書をよく読んでみてはいかがでしょうか。
まとめ
「年金だけでは老後資金が2,000万円不足する」という金融庁の報告書は、衝撃的な内容でしたね。
しかし、感情的になって、国民年金保険料を払わないのはおすすめしません。
この記事で紹介したように、保険料を払うことで、万が一のときには遺族年金や障害年金が支給されるからです。
また、金融庁の報告書には、国民年金が「老後の収入の柱であり続けるのは間違いない」とも書かれています。
現時点では、関連ニュースに惑わされることなく、家族や自分のために国民年金保険料を払い続けるべきだと私は思います。